Top | 日本の山岳データベース | GPS 入門 | 装備品 | 本棚 | 技術研究本部 | ブログ || 旧ウェブサイト
日本は山だらけ〜 技術研究本部 報告書 第三号 平成二十四年五月十四日 公開

ハンディ GPS で表現可能な緯度経度の分解能

概要

GPS で区別できる位置(緯度・経度)の最小の距離はどのくらいでしょうか? ここではそれを「分解能」という言葉で表現しようと思います。 本稿では、ハンディ GPS で一般的な緯度経度小数点以下5桁で表現できる最小の距離を求めたいと思います。 同時に他の緯度経度表現がどのくらい位置をピンポイントに示しているかについても考察します。 また、緯度経度 1 度の距離も同時に求めてみます。

緯度の距離

緯度 1 度は地球表面ではどのくらいの距離でしょうか。 この距離を知るためにまず地球表面の緯度(南北)方向の外周の正確な距離が必要です。 一般的にはこれは 40,000 km と知られています。 なんともキリのいい数値ですが、それもそのはず、 もともと 1 メートルが地球の南北方向 90 度分の地表の距離の 1000 万分の 1 と定義されたので、 地球一周 360 度分でちょうど 40,000 km (= 40,000,000 m) になります。 ちなみに現在のメートルの定義は地球の大きさを使わずに、光が 1 秒間で真空中を進む距離を元に定義されています。 40,000 km という値は今ではもっと正確に計測することができ、実際にはもう少し長いことがわかっています。それではもう少し正確な距離を求めてみたいと思います。 地球は楕円体で近似されますが、世界測地系という測量のための基準では GRS80 と呼ばれる楕円体を使用し、 赤道半径 6,378,137.000 m、極半径 6,356,752.314 140 m と定義されています (実際は赤道半径とそれに対する極半径の扁平率の逆数で定義されています)。 地球を真横からみれば楕円なので、楕円の円周の公式使用することによって正確な距離が分かります。 楕円の円周はかなり複雑な式になるので、ここではその近似式を用います。 式を示すのが面倒ですので、代わりに R のコードを示します。 出典は Wikipedia 英語版の Ellipse のページ [1] です。

eldist <- function(a,b){
  c = 3 * ((a-b)/(a+b))^2
  pi * (a + b) * (1 + (c/(10 + sqrt(4 - c))))
}
実行結果 (GRS80 楕円体):
> eldist(6378137.000,6356752.314140)
[1] 40007862.91692074
結果は 40,007,862.917 m になりました。8 km ほど長い様です。 理科年表 [2] によると、赤道から北極までの子午線長は 10001.97 km のようです。 これを単純に 4 倍した値は 40007.88 km となり、上記近似式とのずれはわずか 17.083 m です。 なかなか正確に近似できているようです。 この 1 周の距離を 360 で割れば 1 度あたりの距離が出そうですが、実際は楕円のため角度によって 1 度の距離が変わってきます。しかし平均的には 360 で割った値、 すなわち 111,132.953 m が 1 度あたりの緯度(南北)方向の距離になります。 ちなみに緯度 1 秒(度の 1/3600 の単位)では 30.870m です。

赤道方向の方が長い楕円では、極地付近すなわち高緯度(90度付近)の方が 1 度あたりの距離が長くなります。 国土地理院のサイト [3] には緯度が与えられた際の、 赤道からの子午線長を正確に計算する式が公開されています。 より正確な 1 度の距離が知りたい場合はこれを利用すればいいと思います。

前回報告したヒュベニの公式でも計算させてみます。 東京付近の 1 度、すなわち北緯 35 度から 36 度までの距離は 110,949.759 m と計算されました。 これは先ほど計算した平均的な 1 度の距離より 183.293 m ほど短い値です。 極地付近では 111,693.980 m となり 561.027 m ほど長くなります。 ちなみにヒュベニの公式による子午線長は 10,001,859.967 m で理科年表の値より 110 m ほど小さい値がでます。 逆に言うと、赤道から極地までの誤差が最大でも 100 m 程度ということになります。 東京・福岡間の比較で国土地理院による計算式と 400m ほど差が出ていましたので、 垂直方向に計算する分には誤差はこの程度、ということが言えそうです。

ハンディ GPS では DDD°MM.MMM' というフォーマットが多く使われています。M で表したものは「分(ふん)」とよばれるもので、度(°)の 1/60 の単位です。つまり度とその 1/60 の分を小数点下 3 桁まで使用した表現です。このフォーマットが多く使われるのはガーミン GPS のデフォルトの設定がそうだからでしょうか?ほかにもすべて度だけで表現する DDD.DDDDD° や分のさらに 1/60 の単位である秒を使った DDD°MM'SS.S'' という表現もあります。いずれにせよ度以下は 5 桁です。上述より緯度 1 度は 111,132.953m ですので 0.00001 度ではおよそ 1.111m です。つまり、これがハンディ GPS で区別できる位置の最小の距離(解像度)になります。ようするに 1m 以下は表現できていないということです。ちなみによく使われる DDD°MM.MMM' というフォーマットでは、最小幅 0.001' (0.001 分) が 1.852m となりこれが最小の分解能です。 DDD.DDDDD° より当然ですが、少し表現できる分解能は悪くなります。

経度の距離

経度は緯度とは事情が異なります。経度 1 度あたりの距離はその地点の緯度によって異なります。 すなわち、赤道上での経度 1 度が最も長くなり、南極・北極では 0 になります。 赤道の距離は赤道半径から簡単に求まります。GRS80 楕円体では、赤道半径は 6,378,137 m と定義されています。従って赤道長は 40,075,016.686 m になります。 これを 360 で割った値、すなわち 110,946.258 m が赤道上での経度 1 度の距離です。 従って 0.00001 度ではおよそ 1.109m となり緯度の場合とほぼ同じです。

東京が位置する北緯 35 度ではどうでしょうか。ヒュベニの公式で 2 点の緯度が同じ、すなわち y1 = y2 = y 、また経度の差 dx は地球 1 周分、すなわち 2π と仮定すると緯度 y (単位はラジアン)の時の経度方向 1 周の距離は dy = 2π N cos y で求められることがわかります。 Nヒュベニの公式を見てください。実際に計算させてみます。これを実際に北緯 35 度で計算させるとおよそ 32,843,741m。1 度では 91288.17m。0.00001 度では 0.91m ということがわかります。

上で求めた式 dy = 2π N cos y は緯度 y の時の経度 360 度分の距離です。この式を使うと、メルカトル図法における緯度毎の縮尺の計算にも使えそうです。インターネットで普及している正方形のタイル画像による地図はメルカトル図法ですので、後々役に立ちそうです。

▲ Top

参考文献

[1] Wikipedia Ellipse http://en.wikipedia.org/wiki/Ellipse
[2] 理科年表 国立天文台編 丸善出版
[3] 国土地理院 測地部の計算式のページ http://vldb.gsi.go.jp/sokuchi/surveycalc/algorithm/



Copyright © 2007-2012   やまだらけ   無断転載禁止   Since 2007/7/26   このウェブサイトについて
当ウェブサイトで使用しているテキスト、情報、画像等の権利は、明記してある場合を除き全て やまだらけ に帰属します。無断転載は一切禁止します。 当データベースの情報に限り、複製・二次利用等は出典を明記すれば自由に行うことができます。